微生物に魅せられて

▶堆肥だけでよい作物ができる!?
日本一の甘夏みかんの産地である熊本県・田浦(現芦北町)。1973年、マルタ創業者の故鶴田源志と息子で現会長の鶴田志郎は、雨が多く各地の梨が食味を落とす中、おいしさを保っている産地があることを聞きました。
調べてみるとその産地では、海藻の粉末を使った堆肥のみで栽培をしていると言うのです。化学肥料主体の農業が常識だった時代、「なぜ堆肥だけでよいものができるのか」その理由を知りたいと思いました。

▶京都大学 小林 達治先生との出会い
そんな折、出会ったのが京都大学農学部の故小林達治先生です。先生は、土1gの中には目に見えない微生物が億単位で生息していて、農産物の味をよくし、栄養価を高めていると言います。
「微生物の寿命は平均すると2時間程度。生きている間にアミノ酸や核酸、ビタミンやホルモン、酵素などをつくり、これらを体内に残して死に、菌体となり土壌内に放出する。植物はそのアミノ酸等を根毛から有機態のままでも吸収している」というのが先生の理論ですが、当時、植物は養分を無機の状態で吸収するというのが共通認識でしたから、初めはとても信じられませんでした。半信半疑ながら農場で実験すると、堆肥のみで栽培したネーブルで、食味外観共によいものが収穫できました。
微生物は、除草剤を使えばすぐに、化学肥料を施せば徐々に、死んでいきます。「このままでは日本の農業は持続できない、小林先生の理論を農業に活かそう」と強く決意、1975年、鶴田親子はマルタの前身である有機農法の団体(マルタ柑橘生産組合)を立ち上げました。

▶映画「根ノ国」を担いでの全国行脚
事業は少しずつ軌道に乗っていきましたが、土の中の微生物の役割は世の中に知られていません。そこで、小林先生にご協力いただき、土の中で何が起きているのかをわかりやすく伝える映画「根ノ国」を制作しました。1年2か月に及ぶ制作で、稲の根がタンパク質を細胞内に取り込む様子や、微生物が根の周りでカビの増殖を抑える様子の撮影に成功、1981年に完成しました。
このフィルムと映写機を担いで各地で上映と講演を行い、土づくりの重要性を説いて回るうち、有機農業を目指す生産者のネットワークが全国に広がっていきました。

▶グループ基幹資材「モグラ堆肥」を開発
微生物の力でおいしい作物をつくるためには土づくりが肝心。そのためには質のよい堆肥や有機醗酵肥料を手に入れることが必要です。マルタでは、1978年に独自の有機醗酵肥料「モグラ堆肥」の製造をはじめました。いろいろな種類の有機物を原料に使い様々な微生物が土の中で活躍できるように設計し、工場であるモグラ堆肥センターは良質な原料を手に入れやすい静岡県・藤枝に建設しました(現在は同じ静岡の御前崎に移転)。
醗酵の世界は奥が深く、試行錯誤の連続でしたが、実際に生産者が使用しての改良を繰り返し、ついには化学肥料を使わなくても栽培できるほぼ万能な有機資材が完成、今やグループの基幹資材となっています。マルタの産地が拡大していった歴史は、生産者の口コミで広がっていったモグラ堆肥が、土づくりの大切さを全国に広めていった歴史とも重なっいます。